性犯罪の厳罰化と人間の尊厳

2015年10月21日

性犯罪の厳罰化と人間の尊厳
芹田健太郎


 性犯罪の厳罰化によって性犯罪の防止につなげたいとして、前の法務大臣が10月2日に法務大臣の諮問機関である法制審議会に諮る考えを発表し(「朝日」10月3日朝刊)、内閣改造で交代した現法務大臣が同9日、強姦罪の法定刑の下限を懲役3年から5年に引き上げ、また、現行法では強姦罪で起訴するには被害者の告訴を必要とする親告罪の規定を削除するなどの刑法改正要綱を同審議会に諮問した(「神戸」10月10日朝刊)。

 何が問題であったのか。日本の強姦罪規定は刑法が明治40年(1907年)に制定されて以来、2004年に法定刑が下限2年から3年に引き上げられた以外、変更がない。「暴行又は脅迫を用いて」「他人の財物を強取した」強盗の法定刑の下限が5年で、文言上は同じ「暴行又は脅迫を用いて」「女子を姦淫した」強姦の法定刑の下限が3年というのは、いかにもおかしい。強姦の方が強盗より処罰が軽いのだ。強姦ということばは日常的にはあまり使われないが、レイプのことである。なおまた、強姦罪の被害者を女性に限っていることも問題視されてきたが、聞くところによると、この規定は、女性の尊厳を守るためではなく、娘や妻といった財産に対する罪であったことの名残であるという。それにしても、財産以下の扱いである。

 強姦罪は親告罪とされており、それはプライバシーを守るためとされているが、それは別個に考慮すべきことであり、社会が犯罪から被害者を守る点からは同規定の削除は望ましい。以上のような問題点は、女子差別撤廃委員会(現在の委員長は日本の女性弁護士)や自由権委員会からも指摘されてきたところである。

これまでの事件の裁判からは、女性たちは加害者から人間としてではなく、モノとして扱われたことを強く許しがたく思っている。民事における損害賠償事件としては、裁判所は、強姦、レイプを「性的自由および/または人格権」を侵害する不法行為となるとして損害賠償を認めている。いずれにしろ、性犯罪では人間の尊厳こそが侵害されていると知るべきである。(国際法・国際人権法学者)

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Posted by 京都ノートルダム女子大学学長ブログ at 08:58 │学長社会時評

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