障害者差別解消法の施行

2016年03月25日

障害者差別解消法の施行
芹田健太郎


 障害者差別解消法(障害を理由とする差別解消の推進に関する法律、平成25年6月26日法律65号)は、平成28年4月1日から施行することが決められていたが、このたび4月1日に施行されることとなった。

 障害者差別解消法は、国連の障害者権利条約が2014(平成26)年2月19日に日本について発効したが、その国内法整備のために制定されたものである。

 内閣府は、この法律について、「障害のある人もない人も、互いに、その人らしさを認め合いながら、共に生きる社会をつくることを目指しています」と説明しています。障害者権利条約を作成するにあたって種々の議論が闘わされたが、結局国連は従来から取ってきた人権アプローチ(right-based approach)に基づき、包括的に人権を定めることとし、条約第1条は「障害のあるすべての人(all persons with disabilities)」の権利を定めた。ここでは、「人」の権利が定められている。この人の中には、「長期的な身体的、精神的、知的または感覚的な機能障害(impairements)を有する者であって、種々の障壁(barriers)との相互作用によって他の者と平等に社会に参加することを妨げられることのあるものを含む」とされている。ここでは機能障害のみならず、社会の側が作っている障壁も問題とされている。

 具体的には、たとえば、電車に乗る場合、車椅子の人は、ホームに通じるエレベーターがなければ乗ることができない。電車に乗れないのは、足が悪いからなのか、エレベーターがないからなのか。この問いに対して、この条約は、エレベーターがないことでこうむる不利益は社会の在り方が問題なのではないのか、と問いかけた。
 
 そこで、条約では、不当な差別的取り扱いの禁止は当然のこととして、障害のある人が社会の中にあるバリアによって生活し辛い場合に、社会の中にあるバリアを取り除くための何らかの対応を必要としている場合に、これに対応すること、これを合理的配慮というが、合理的配慮を否定することも、条約が禁止する差別としている。合理的配慮は、「障害のある者が他の者と平等にすべての人権および基本的自由を享有し、または行使することを確保するための必要かつ適当な変更および調整」のことである。もっとも、合理的配慮は、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失したまたは過度の負担を課さないものをいう、とされているが、私たちの社会が生き生きと輝くためにはこの法律が果たす役割は大きく、是非完全な実現に向かって進めて行きたい。
(国際法・国際人権法学者)


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Posted by 京都ノートルダム女子大学学長ブログ at 15:33 │学長社会時評

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