「ポスト真実」の時代

2016年12月12日

社会時評

 「ポスト真実」の時代

芹田健太郎



 師走となり、流行語大賞が話題に上っている。「保育園落ちた日本死ね」の社会的インパクトはすごかった。しかし、「神ってる」って何?
 白状すると、全く知らなかった。それだけ社会へ関心の範囲が狭まったのか、社会事象に疎くなったのか、それとも老いたのか、と感じることの多い師走である。

 ところで、世界最大の英語辞典オックスフォード英語辞典が今年を象徴する言葉として選んだのが「POST TRUTH」だったとの報道があった。言わずと知れたことだが、POSTは、日本語でも「ポスト~」と用い、「~後」のことである。TRUTHは真実のことであるので、文字通りに直訳すれば、「真実後」となるが、真実から離れて虚がまかり通る、というほどの意味であろうか。昔からのことわざで「一犬虚に吠れば万犬実を伝う」というのがある。うそも百回言えば真実になってしまうのだろうか。

 現在のフェイスブックなどのソーシャルメディアの発達した世界では、たとえば、超大国アメリカの大統領選のさなかに、ヨーロッパの片隅の一青年が、ローマ法王もトランプ氏を支持すると発言した、という偽情報を金儲けのために流した、という。これがアメリカのカトリック教徒の投票行動にどれだけの影響を与えたかは計り知れないが、しかし、トランプ氏の発言の70%が「虚偽」または「おおむね虚偽」との米国調査機関の発表もあるという(『朝日』2016年12月3日オピニオン)。こうしたことは米国の大統領選に限らず、身近にも起きている現象である。情報操作は人を陥れるために容易に使われることがあるだけに、虚実ない交ぜの世界になりつつある中で、真実を見極め、人との繋がりを容易にし、強化する道具としてソーシャルメディアが活用されることを願うこと切である。

(国際法・国際人権法学者)


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Posted by 京都ノートルダム女子大学学長ブログ at 10:19 │学長社会時評

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